日本沈没ー日本の閉塞感・無力感(その4)

  前回(その3-----この番号を書き忘れました)で、携帯電話(含むスマー

 トフォン)とインターネットの急激な発展により、資金(お金)の片寄り
 が生じ、そのしわ寄せ(小生が勝手に考える原因------収益が吸い取られ、
 その分大手企業の利益も減るという構図)が一流大手企業を襲ったことを
 話した。そこで今回は、その一流企業で何が起こっているのかを見てみよ

 う。

 
  遠くは、全世界で問題になった「エアバック」事故のタカタ(今年の4
 に事業譲渡で実質廃業)である。エアバックによる事故に対して、開示及
 びリコールなどの適切な処理をしなかった、ということで基本的には廃業
 に追い込まれた。近時は、東芝の不正会計(粉飾決算)や三菱グループ
 大手非鉄金属メーカーの三菱マテリアルの品質データの改ざん問題である
 が、何といっても「データ改ざん」「事実の隠ぺい」が圧倒的に多い。
 
  そこで、代表的な神戸製鋼所及び日産自動車等のデータ改ざんと東芝
 不正会計の個別事例を抑えておくことにする。
 
 1、データ改ざん問題
  まず、神戸製鋼所については、一部の製品について、その品質・強度・
 耐久性についてデータを改ざんしたもので、その製品の出荷先は、ボーイ
 ング、トヨタ、日産をはじめ500社以上に及んでいるとのこと。
  一方日産自動車については、無資格検査を組織的に行っており、スバル
 では、長年にわたって燃費データの改ざんが発覚したのである。そしてこ
 の流れは上記の三菱マテリアルに及び、果ては経団連会長まで輩出した東
 レの子会社の品質データの改ざんに至ったのである。
 
  いずれもが、これが長年に亘って行われており、それが内部で発見して
 も隠ぺいを行ったことである。
 
  この件に関しては、コンプライアンスの問題にしたり、企業の社会的責
 任論にしたり、ひどいのは中間管理者層の忖度問題にまで言及しているマ
 スコミがあるが、根本的には、今の一流企業の社長はじめ経営陣が、半
 期、四半期ごとの収益公表が全てと考える「小粒」の人物が多くなったこ
 とによると考えたい。
  社内コミュニケーションの悪さ、発見時の初動対応の取り方、最終責任
 の取り方などが問題となっており、いずれもその最大原因は、「収益の
 み」を考える組織を育てた結果であり、本来の組織が機能不全に陥ってい
 たことにある、と考える。
 (忖度という言葉が流行っているが、誰かさんの主張のように、「忖度は
 廻りや相手方がしたのであり、自分は関係ない」のではなく、忖度させる
 雰囲気を作っている本人が一番悪いのである)
 
 2、東芝の不正会計問題
   2009年以降、7年間で総計2248億円の利益水増しを行っていた。ここで
 も代々の社長たちが「チャレンジ」と称し、利益最優先を指示したことが
 明るみに出ている。リーマンショックの大赤字を挽回するための施策だっ
 たそうだが、原子力事業の失敗も重なって存続の危機に陥っている。そこ
 には、往年の電子機器はじめ家電大手の名門企業の面影はない。
  この不正会計を行ったときの3社長については、
  「西田さんの時から数字を細かく気にするようになった。明らかに社内
   の雰囲気は変わった」
  「佐々木さんからは厳しき叱責され、利益を出せ、とか抽象的な指示を
   受け、とても嫌な思いをさせられた」(この佐々木社長は安倍首相か
   ら任命され内閣府経済財政諮問会議議員を務めた)

  「田中さんは必要以上に高い目標を公表してしまう。下の者が、そんな

   数字無理でしょ、というくらいのもの」

 との言葉通り、「小粒」そのものです。
  東芝の代々の社長には、石坂泰三(第2経団連会長、財界総理とまで
 言われた)、土光敏夫(第4経団連会長、土光臨調でも辣腕を振るうとと
 もに、質素な生活でも有名)など、財界どころか日本政府をも動かせるほ
 どの人格者を輩出した企業とはとても思えない。
 
  ここまで見てくると、東レのデータ改ざん、東京電力の「福島第2原発
 問題での対応等を併せ考えると、経済同友会、商工会議所は論外として、
 経済界、財界を束ね、時の首相も顔色を如何っていた経団連も、現在では
 全く役に立っていないことが判明した。
 
  もう一方の企業経営者と対立構造にある労働組合、さらに、今の野党を
 支えている(?)「連合」という労働組合の最大の上部団体も、労働者の
 組織率2割以下で、その大半は大手製造メーカーの労働者に依存している
 ことから、すでに社会的役割はとっくに終わっているものの、さらに進ん
 で壊滅の危機すらあるといえる。
  -どうして連合会長は、エラそうにしてられるのか、足元に火が付いてい
   る認識はあるだろうに!-
 
  このように、次々と不祥事をばら撒いている大手一流企業の小粒化(世
 故さ加減)にはうんざりしていたが、それを束ねる経団連も、また時には
 企業経営を監視する役目を負う労働組合も、この体たらくでは、日本の閉
 塞感・無力感が漂っても致し方ないかもしれない。
 
  いやいや、メーカーだけでは分からない、という人のために、次回は、
 小生の得意とする金融機関で見てみることにする。

  乞う、ご期待を!