ダイヤモンド8月16日配信朝倉氏の「ファイナンス思考論」について

   同氏は、日本の多くの企業等の、目先の売上・利益を優先する「PL脳」から成長を描いて意思決定する頭の使い方「ファイナンス思考」への脱却を勧めている。
  そして、目先を優先する「Pl脳」になる原因を、①高度成長期の成功体験、②役員の高齢化、③間接金融中心の金融システム、④PLの分かりやすさ、⑤企業情報の開示、⑥メディアの影響を挙げられている。
  ⑤及び⑥は枝葉末節なことなので除外して、①~④について批判していきたい。
 
  先ず、最初に、「PLの分かりやすさ」により、目先の売上・利益を優先する、と言われるが、(おそらく「PL」とは損益計算書Profit and Loss statement)と貸借対照表Balance Sheet)をいうのであろう。したがって小生はPL等という) PL等ほどすべての企業の実態を表すものはないと考えている。それに同氏のいう「分かりやすく」は決してない。確かに、1期分のPL等では、1年間の利益状況とその利益の源泉といえるある一定時点の資産状況が表れているだけだが、これを最低4~5期連続で比較すると、利益状況も、粗利益段階、営業利益段階、経常利益段階、銃利益段階でどのように推移しているか、また資産状況も、各勘定科目段階(特に「その他」「仮勘定」等は要注意)における増減は何が原因となっているのか、という風に、その企業の過去からのすべての動きが把握できるし、見えてくる。
  ただし、それは、一目見て分かるほど決して容易ではなく、分析ga必要となる。

  次に、役員が高齢化しているが故に高度成長期の成功体験が抜け切れないから、目先の利益を追い、ファイナンス思考への脱却できないと断じる。
 (そも、「ファイナンス思考」とはよく理解できていない)
 これについては、戦後からの経済情勢とアメリカの経済学者等の著書を持ち出し縷々説明されているが、これは、経営者の資質の問題に尽きるように思う。経営陣に加わった人たちの中にはそのような人たちがいるかもしれないが、それは「センス」の問題で、目先の利益を負うのは、決して成功体験などではなく、株主、投資家、メディア等に「良く見せたい」と単純に重い、その源泉は自らの「保身」からでたもので、小生はこの経営陣たちを「小粒化」と呼んでいる。

 最後に、間接金融中心の金融システムを採りあげているが、この意は、おそらく資金を融資してもらうために、銀行に利益が出ているように見せたい心理から、「PL脳」から脱却できない、という論法なのだろう。
 これについては、まず「間接金融中心」という認識が間違っている。間接金融の担い手と言われる銀行等が、間接金融から直接金融(債権発行、ファンドからの投資)の流れの中で、資金需要の減少から「構造不況業種」と言われているのはご存じだと思うが-------
 それに銀行等の金融マンもそれほど「阿保」ではない。通常の金融マンであるならば、1期分のBS,PLを見るだけではなく数期分を分析するはずであり、かつ、長く取引先として取引が続いているならば、ただ単なる財務諸表だけでは騙されない。
 
 毎回、愚痴るようで申し訳ないが、評論家、経済ジャーナリスト、経済コンサルタント、アナリスト等の人たちの「胡散臭さ」は、中々払拭させてくれないようである。