残念なり!ヤマト運輸の無残な現状

 ダイヤモンド816日配信「ヤマトの実態」の中で、ダイヤモンド社が、社外秘の「懲罰委員会審査決定事項について」という資料を手に入れ、ヤマト運輸の不祥事の実態を明らかにしている。運賃や代引き手数料の着服は全国的極めて件数が多く、交通事故を隠ぺいし、飲酒運転に至っては毎月発生しているようだ。さらには、クール宅急便を常温扱いにて輸送、メール便を届けなかったりと、あきれ返るほど社内体制は腐っている印象を得た。
 
 昨年、宅急便事業で230億円の未払い残業代が発覚し「おい、おい、ヤマトさんよ!しっかりしてくれよ」と思ったものだが、つい最近、また、引っ越し事業を行うグループ会社が、過去2年間にわたり、法人客2000社以上に過大請求し、その額は17億円に達する事件が発覚したのである。
 
 これらの記事を読むたびに、小生の昔を思い出す。
 銀行に入ったばかりの小生は、はじめて営業に廻され、未熟ということで担当先が十数社しか持たされなかった時、その十数社の中にヤマト運輸(当時は大和運輸)があった。
 当時のヤマト運輸は、規模的には中堅の業者で、日本通運やその他の大手運送会社に比べ、見劣りしていたが、丁度小生が担当になったころに、個人相手の「宅急便」を始めた時にあたったのである。
 当時は、個人相手の商売は、コストばかり掛かって儲かるはずが無いと運送業界関係者が口を揃えて言っており、ヤマト運輸は四面楚歌の情況であった。また、この事業は、全国展開する予定が、監督官庁の旧運輸省(現国土交通省)の事業認可の引き延ばしの妨害(他の運送会社等の要請に乗っかったのであろう)に逢っていた最中だったのである。
 
 「この小口運送こそ、当社が他を差別化する決定打であって、これで「親子クロネコ」が全国のお客様に親しまれ、かつ個人のお客様の利便性が飛躍的に高まるはずである」と熱っぽく語る社長の姿を思いだす。このような状況下にあったから、余計印象に残っているかも知れない。
 そう、この若造が当時の2代目小倉昌男社長に直接会えたのだ。それ位にフランクな会社であった。世間の評判も、業界の最先端を行き、かつ従業員の礼儀正しい応対と正確な輸送、かつ適正な運賃体系などが、個人のお客様を中心に宅急便と言えば「クロネコ大和の宅急便」だったのである。
 
 どうして「このような」体たらくになったのか、と思い調べてみると、企業が大きくなると必ず起こる「お家騒動」があったようだ。3代目のぼんくら社長を追い出した張本人が、みずほグループからきた現会長(富士銀行出身者)で、2代目の小倉社長亡きあと、権力を振るったらしい。
 やっぱり銀行員出身か、特に団塊の世代の「小粒化」の社長では、このような会社の体質になるのは、致し方ないか、と妙に納得してしまった。
 
 余談だが、今回を機に、小生にやさしく接して頂いた小倉2代目社長の本が出ているのを発見した。「小倉昌男 祈りと経営」小学館。買って読みたい思いもあるが、余りにも家族関係が悲惨なので、ちょっと躊躇している次第である。