「最強の経理部を作る5つのポイント」ダイヤモンド8月31日配信

 「ビジネス作家・経理環境改善コンサルタント」田村氏の論稿だが、この肩書き、どういう仕事なんだろう、と思ってしまう。コンサルタントでも「経理」に特化しているコンサルとは何だろう。

 それは兎に角、ポイントとおっしゃる事項はすべて当たり前のことで、それは経理部に限ったことではなく、経営一般の組織の活性化で言われている事柄を集めたものに過ぎないようである。
 例えば、「個々の能力がフル活用できる環境の構築」「課題・問題点を共有して解決策を探る」「外部や内部の環境変化に柔軟に対応できえる役割分担」は、経理部に限らずどの部・課にもいえることで、目新しさはない。 却って、経理部という仕事柄、これをこのまま真っ正直に進めることが「良いことなのか」疑問符が付くことがある。これについては後述する。

 また、ポイント1の「管理会計に重点を置け」という事柄については異論がある。筆者は「財務会計」と「管理会計」を分け、前者は顧問契約の税理士に任せればよく、管理会計に重点を置け、とおっしゃる。基本的に小生は、財務会計管理会計を分ける意味がないと考える。もともと両者は不即不離の関係で、収益・原価などのデータを管理した上、内部情報の原資を作るが、これを基にして外部情報を加工するのである。したがって両者を知っているのが経理マンの必須事項と考えるが、如何なものか?
 また、経験則上、月1回程度の顧問税理士をそれほど当てにしてはならない。知識的には経理マンの方が上回っていることが多く、対税上、「税理士」という名を借りるだけの場合が多いことを、実務を知らない筆者は考慮していないのが致命的である。

 高度成長時代のような右肩上がりの売上が見通せない昨今では、経理部の重要性は増しているのは事実であるが、基本的には「数字を間違ってはならない」という大前提がある「部」である。ために必然的に「保守的」になるのであるが、ある程度でそれは容認するべきで、他の部の組織活性化の原則を無定見に経理部まで拡張していいというものではない。
 
 付言すると、進んでいる企業では、企画部と経理部を統合して「経営企画部」なるものを発足している。すなわち企画マンも机上の空論で企画を論議するのではなく、隣りの経理上の数字をキチッと理解して議論し、経理マンも、自ら作成の数字を隣りの企画マンがどのように利用しているのかが分かり、その利用を見て加工の方法を工夫するのである。そうすると、自ずと「次代の経営陣」が育成される、のである。