スルガ銀行大研究(5)

4、スルガ銀行三者委員会報告書について

<要約版の要約とその批判>
    以下、青字は小生の批判部分になる。
 
 1、発生した問題
  (1)収益不動産ローンに係る損失計上
     20186月期までに、収益不動産ローン全般に関して、717億円

    【推計】の貸倒引当金を計上 

--------事実のみの羅列。では本件シェアーハウスローン及びその他の収益不動産ローンの損失額(担保不動産処分後)の言及はなく、そもそも試算もしていない。
  (2)個別の不正行為等-①直接的な偽装行為
      ・債務関係資料の偽装
       ① 10%の自己資金を要求する運用のために自己資金の偽装
② 収益関係資料【年収】を偽装
③ 団体生命の加入申込における診断書の偽装等
      ・物件関係資料の偽装
        ① レントロールやサブリース契約を偽装
           ---レントロールとは不動産の賃貸借条件を一覧表にしたもの。難しいこと言わないで賃貸条件と言えば済む。専門的と見せるためか、やたらとこういう言葉を使いたがる。
        ② 物件購入後の事業計画の偽装、虚偽も賃貸借契約
        ③ 建物の検査済証や確認済証の偽装
      ・売買関係資料の偽装
        ① 虚偽の売買契約書
      ・審査の偽装の蔓延
        ① 調査方法はフォレンジック調査及びインタビュー
           ----フォレンジック調査とは、電子機器の中から法的証拠や手がかりを探し出すあらゆる取組をいうが、簡単に言えば電子メールの調査のこと。
        ② 正確の偽装行為の件数を数えるのは不可能。全般に
          偽装が蔓延
      ・行員の偽装への関与
        ① 偽装に関して多くの職員が関与、所属長レベルでも
          同様
        ② 1名の執行役員は偽装行為に直接関与、それ以外の
          執行役員も認識
 
      ------三者委員会が、何か「大変なこと」をしているようだが、やっていることは、行員間および行員と業者のメール、役員、行員へのインタビューだけであり、そこからのみ「事実認定」をしているだけで、従って、偽装行為別の件数、金額、そのうちの延滞及び顧客の被害額の想定等は一切行っていない。これは、自らも認めており「正確には不可能、でも全般に偽装は蔓延」と述べている。
        そもそも、この第三者委員会は、企業法務で著名な中村弁護士と、その中村弁護士の事務所の居候弁護士3名とで構成するもので、企業組織の中での経験が皆無、かつ財務諸表に精通していない者たちである。当然、限界もあるだろうが、それを勘案しても「お粗末」な報告書と言える。
        行員に金銭の授受があったことを認定しているに拘わらず、預金通帳等の提出を求める権限はないので確証は得られない、として放棄しているに至っては、弁護士なのかと耳を疑ってしまう。
  (3)個別の不正行為等-②偽装以外の不正行為等
      ・抱合せ販売、繰上返済防止、マッチング業務、取引停止業者
       の取引
  (4)個別の不正行為等-③不正行為等の温床を醸成する行為
      ・業者に審査条件の暴露、業者との面談で顧客とは金銭消費貸借証書契約時のみ面談、業者からの金銭の授受
 2、発生した問題の原因
  (1)審査体制の問題
      ・融資管理部は認識していたとするものの岡野副社長以外共有
      されなかった。

     -----そんな馬鹿な! 会議で出た問題点については、担当役員は当然のこと、たとえ正式な報告書でなくても、「この手」の問題は、すぐに口を媒介として拡がるもの。現実に行員段階ではすでに認識があった、というのだから。副社長だけを悪者にする構図。

      ・シェアハウスローンには、返済原資の変動リスク、収益還元法による担保価格と実勢処分価格とのかい離、サブリースによるリスクの増幅、などのリスクがあるにもかかわらず、資産形成ローン事務取扱要領が適用され、独自の新商品としての審査が行われていない。
     ------シェアーハウスローンの3つのリスクは、他の商品も同じリスクがある筈。どんなローンも30年も返済原資が一定である筈が無く、いざの時は担保不動産の売却になるが、その評価は公示価格評価と大きく変わらず、通常は収益還元の方が低く出る筈。乖離があったとしたら、家賃収入に偽装によるものであろう。またサブリースのリスクの中で、仲介会社の健全性の問題にするが、こんなのは当たり前のリスクで、特殊なものではない。
  (2)営業の問題
      ・営業目標はトップダウン方式で、現場の実態を勘案しない厳しいノルマと厳しいトレース
      ・極端な形式主義(書類さえ揃えればそれでよい)で、債務者とも顔合わせは1回のみ。
     ------何処まで本当のことなのか、元銀行員としては理解不能。もし本当であるならば、もう「銀行」ではなくなっている。
  (3)内部監査体制の問題
      ・多くの審査役は、問題点を認識していたが、監査部長に権限がなかったこと等で経営会議に報告されなかった。
     ------内部監査報告は、最低限でもレポートとして報告し、最低、担当役員の印鑑を貰うはずである。その担当役員は、どのように処理したのかは全く書かれていなく、ただ形式主義に陥っていた、のみの記載。全く深堀していない
  (4)統制環境(企業風土)
      ・極端なコンプライアンス意識の欠如が認められ、企業風土の著しい劣化があった。また人事評価制度も、人事異動に関して管掌取締役に報告されず、自己の管轄以外の部門の人事も行われ、規程上の根拠のない人事会議により重要な人事異動が決定された。
     ------規程上にないからと言って「人事会議」なるもので人事が決まっているのなら、最低、取締役間では共通の認識があり、問題ないと思われる。問題なのは、その会議で、担当部の役員の意見を聞かず、1人ないし2人の意見で決定していた時である。これを深彫りすべきである。
  (5)ガバナンスの問題
  (6)本件の構図~パーソナル・バンクの聖域化とその本質的課題
     ------「パーソナルバンク」の意味が分からない。個人部門という意味なのか、それとも他の意味が含まれているのか、定義すべきである。
  (7)問題表面化後の経営の対応と問題
 
  <以上の要因各種報告を通覧するに、取締役、執行役員、ともにインタビューを中心に纏めたものと推量されるが、取締役等も「何らかの罪科を負いたくない」ために基本的には「知らない」をその基本姿勢にした結果なのかもしれない。ただ、それを鵜呑みにしているのは、何の調査なのか、と言いたい。認識していたが権限が無い、とか、取締役及び社外役員には単年度の営業目標や中期経営計画も知らされていなかった、などは「ありえない」話であり、その辺の組織人の「逃げ口上」を弁護士で組織する第三者委員会は見逃してはならない。犯罪者の「うそ」をその犯罪者の弁護人ということで鵜呑みにするのと何ら変わらない。同じ事務所の若い居候弁護士では、とてもじゃないが無理だと思われるが、その辺の深掘りの無さが、この報告書の最大の弱点で在るといえる。その傾向が見地に出ているのが、以下の各役員の責任の認定である>