住友銀行秘史を読んで
実は途中で読むのをやめてしまった。
自らが能力があるのに、住友銀行のトップに登りつめなかった悔しさが随所に見られ、これでもか、これでもかというくらいに、自らのやったことを自慢しているだけに過ぎないからです。
わずか2年前の著作であるにかかわらず、自ら鼻にかけているMOF担って一体なんだったんだろうとか、財務省の今の体たらくを見るにつけその役割の功罪を問うとかが全く見られない。
言いたいことは、MOF担って大変で、これを見事にこなす人は少なく、それを見事にこなしたのに、何で? という思いなのだろう。
自らが主体となった平和相互銀行との合併話も必然的な合併話ではなく、住銀が仕掛けていったもので、そのために自ら闇に首を突っ込んでいったのではないか、と思うくらいで自業自得と思っている。ところがこの著者は、平和相互銀行を追い詰めるために、ゴルフ場の太平洋クラブに関する一族の首を絞めにかかったに過ぎないのに、金融という首を絞めにかかった案は自らのものと自慢する無神経さ、いかにも当時の「住友」銀行員そのままである。
私が銀行に勤めていた当時は、住友銀行の猛烈さを「セブンイレブン」といい、そのえげつなさは、お客様の中で評判であったのを思い出す。ただ、私の勤めていた銀行は、支店長時代、お客様から「支店長、部下の方が公園の脇に車を止めて寝ていますよ」と注意されるくらい、いい加減ではありましたが-------.
このような集団だからこそ、イトマン事件を舞台に闇の勢力に食い込まれるのだろうと思う。もっと鼻につくのは、イトマンの河村社長も自らの先輩にもかかわらず、ノンキャリということで簡単に片づけるのには、官庁となんら変わらないのに、本人が気づいていないことである。
さらに、さらに言えば、「エピローグ」というあとがきである。
取締役になったのは同期で1番早い3人のうち1人だが、東京本社に戻れなかった悔しさと、早く関係会社に出されたことを恨んでいるにもかかわらず、「恰好をつけるわけではないが、半ば住銀から出ることを選んだ面が多い」とのたまわっている。往生際の悪さはあきれるほどである。また「もし銀行で頭取になりたいのならばどうすればよかったのか、それは何もしないことだ。減点主義の組織だから」と未練たらたらで、到底、わたしはついていけない人物である。
私より、お歳は5つもうえで現在は73歳、著作したのは70歳か71歳、こんな内容のものしか書けない自分を情けなく思わないのか?
メガバンクを中心に、金融そのものの社会における存在感が問われている昨今、自らの過去の経験から、現在の銀行、あるいは銀行員に「1つの指針」を示してほしかったのだが---------。
なお、本書を進めてくれた友人は、当該作者の人間性よりも、あの大銀行であのような犯罪が行われ、それを周りが止められなかったという事実の方が驚いたらしく、私に勧めてくれたものである。