夕刊フジ「金融庁長官交代でも吹き止まぬ銀行業界の再編の嵐」津田倫男氏を読んで

     8月7日配信の夕刊フジに、都市銀行外資系銀行を経て、コンサルタントとして独立した津田氏の小論が掲載されていた。テレビで見る浅薄な評論家を見るようで、いたたまれなくこの1文を投稿する。
 
   同氏は、金融庁長官が後退し、銀行幹部は金融庁の風圧が和らぐと安心しているが、銀行業界への政府当局の風圧は強まりこそすれ弱くなることはない、と警鐘を鳴らす。そして、その方向が、「金融効率化」=再編への誘導と言い切る。
 
   以下、同氏の浅薄さを指摘する。
   金融庁の検査や指導の重点を、バランスシートではなく経営や戦略に置くのは変わらない、というが、都銀出身のコンサルタントとしては、それは「官庁の仕事ではなく(官僚に経営が分かるわけはない)銀行経営者の固有の仕事である」と言い切るべきである。さらに見識を疑うのは、これを金融庁が緩めれば、ゾンビ銀行や幽霊信用金庫、信用組合が増える、という。全く認識が間違っており、そこまで金融庁が突っ込んだために、銀行幹部が言いなりになり、主体性を持たなくなって,そのような銀行等が増えたのではないか? 論理が逆である。
  また、スルガ銀行不正事件を「この融資は一見新しいが実は古い形の融資と見てきた」と自慢しているが、小生もブログで従来から言っているようにこのスキームは新しいものではないのは銀行経験者なら自明のことである。さらに「銀行が好きな不動産担保融資と何ら変わらない」とは、一体何を言いたいのか? 不良債権で苦しんだ時代をこの筆者は知らないようだ。不動産担保が悪いのではなく、その評価の仕方が厳格で無くなった、という本質を全く知らないようだ。不動産担保ではなく無担保で融資しろと同氏は言うのだろうか!
  以降の論文の要旨は、氏が金融庁のお先棒ではないか、というほど「よいしょ」しているのが目について、「何故ですか」と本人に問いかけたいところである。
  最後の1文も「お上の人事に一喜一憂する暇があれば、自らの足元を固め、未来に向けた戦略や布陣を整えることをお勧めする」とかっこいいことを言っているが、何故、「お上の人事に一喜一憂すること」になったのか、「足元を固め」とは具体的に何を言っているのか、「未来に向けた戦略」とはどういう方向性をいうのか、それを示してみせるのが、コンサルという仕事ではないのか、カッコいいことを小論で書いて小遣い稼ぎをするのが、コンサルタントという仕事ではないだろうと、同氏に警鐘を鳴らしたい。