スルガ銀行大研究(2)

1、最近のマスコミ等のスルガ銀行不正事件関連記事とその批判
 ① 日刊ゲンダイ8月30日
  「30億円を懐に---スルガ銀・岡野会長の悠々自適セレブライフ」
  -不正融資問題で大揺れのスルガ銀行。30年以上トップに君臨してきた岡野光喜会長はケタはずれの大金持ち。自宅は東京六本木の高層高級賃貸マンションで家賃は月150万円。静岡沼津にも敷地220坪に立つ”沼津御用邸“そっくりの豪邸があり、年収は、銀行だけで2億円。その他スルガ銀行株25万株等があるが、銀行辞任の場合は果たしてどうなるのか-
 

 ② ダイヤモンド912日配信「スルガ銀行だけではない!地方金融機関に潜む3つのリスクについて」

  -楽天証券経済研究所山崎研究員の論稿。同氏のいう3つのリスクとは、①貸家向けを中心とする不動産ローン、②カードローンによる個人向け貸出、③主に私募投信による含み損計上を避けつつのリスク資産運用、を挙げる。

   法人向け貸し出し需要の減少及び有価証券運用利回りが取れなくなったための特化戦略だが、それぞれに重大なリスクがある、という。まあこの点は誰にでも指摘できることで問題はない。

ところが、この地銀の行き詰まりを「日銀の政策のせいではない」といい、「銀行情報や経営相談などに付加価値があれば利ザヤを稼げなくても十分な手数料を稼げたはずだ」という言には、頭を傾げたくなる。
筆者の言う3つのリスクのいずれもが、日銀の金融政策からくる副作用に他ならないし、情報や相談は従来から取り組んでいるが、それが手数料に繋がらない悩みがあるからである。銀行の顧客であれば、情報や相談は「タダである」という観念が中々抜けない。それに如何に付加価値をつけようが、である。

筆者が本稿で言いたいのは、3つ目のリスク、すあわち、私募投信を素人の銀行員自ら運用すると「危ないよ」と言いたかっただけなのだろう!

 
 ③ 郷原氏ブログ910日「スルガ銀行不正“ブリンカー社員化”の構図」

 -理論明快で、尊敬する弁護士である郷原氏の論稿。「さすが」と言える内容で、第三者委員会の報告書を「鵜呑み」にしないで、その問題点を鋭く突いている。そして、今回の不正事件の本質は、「顧客本位の銀行経営」に反したことと喝破している。これは、小生が、今の融環境の厳しさの中で、フィンティックやAI化を積極的に推し進め、リアル店舗をデジタル店舗に返還するなど、徹底したコスト削減のみに走っている姿に警鐘を鳴らし、リアル店舗の重要性、顧客と接する重要性を強調していたのと軌を一にする方向である。

  まず同氏は、今回の不正は銀行のためにも顧客のためにもならない不正と報告書で言っているが、本当に銀行のためになっていないのか、と疑問を呈している。個々の行員たちは会社の業績にプラスになると考えたからではないか、と結論付けている。

  また、当該報告書では、この不正行為が顧客の投資判断にどのような影響を与えたのか、また顧客にどれほどの損害を与えたのかは記載していないことを指摘している。

  それにしても今回の不正事件を競走馬のブリンカーに例えるところは、お堅い一方の検事出身の弁護士さんではないと感心頻りで、今後の活躍を期待したい。

 
 ④ フライデー917日配信「スルガ銀行・岡野会長が所有する皇居のような大豪邸」

  -フライデーらしい記事。沼津の豪邸の正面写真と経営ジャーアリと(?)の松崎氏に語らせている内容。

 

 ⑤ 弁護士ドットコム917日配信「スルガ銀・業務停止命令も十分に予想される-金融庁職員の弁護士が深読み」

 -「深読み」という記事にはなっていない。ただ単に第三者委員会の報告書の内容をなぞっているだけで、同じ弁護士が作成したこの報告書の何が重要な指摘で、何が足らなかったのかの、いわゆる「深読み」が欲しかった。

  更に、刑事事件化の方向で、役員についての特別背任罪の成立は、報告書の内容からは成立可能性は低い、というが、本件不正事件の根源は、創業者一族の100年にも及ぶ長い独占と、その一族に媚びる一部役員が、この風土を作り上げた元凶であることを考えると、可能性が低いだけでは何の深読みにもなっていない、と思うが?

 なお、金融庁の業務改善命令は出るのだろうが、その改善命令(審査部の独立性など)を励行すれば「地銀」は生きていける訳ではなく、根本的なところに問題があることを銘記すべきであろう。

 

 ⑥ ダイヤモンド919日配信「スルガ銀の業務停止は必至、他地銀の合従連衡も取り沙汰」

 -まず第三者委員会の調査報告書を基にした記事を先行させ、その後の展開