スルガ銀行大研究(7)
6、するが銀行の現状を「どう」捉えればいいのか?
(1)貸倒引当金問題の見方
・ 以上、財務的にスルガ銀行を見てきたが、おそらくスマートデイズ(2018年4月、民事再生法を申請したが棄却され破産、負債総額60億円)他、不動産担保付ローン向け債権に対する引当として貸倒引当金402億円を計上した以外には、財務的に問題になっていることはない。問題云々よりは極めて好調と言った方が正しい。
・ したがって問題は、この貸倒を償却するための費用が、今後も続いていくかどうかの問題に尽きることになる。
すなわち、倒産する企業の場合、その時点では殆ど資産らしい資産を持っていないのが普通であり、配当に加わっても、債権の2~3%程度の配当で、債権の殆どが焦げ付くことが圧倒的に多い。
一方、個人の場合、消費者ローンの場合と違って、中々破産宣告に踏み切らない場合が多く、何とか返済を続ける。たとえ破産宣告をしても、担保の土地・建物は残っており、全額とは言わないが、債権の相当部分をカバーする。
・ このように見てくると、収益状況から考えて、それほど深刻なことはない、と断定する。かえって引当金相当部分が費用として認められるために、その60%相当(240億円)の節税が図られたといえなくもないのである。
(2)独自の特色を生かし切れている地方銀行
・ 世間では、地銀をはじめ中小の地域金融機関が、環境の閉塞感の中で、生き残りをかけて、新たなビジネスモデルを模索しているのが現状である。
(単位;億円)
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高知信金※
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経常収益計
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1,563 |
1,805 |
354 |
貸出金利息
(貸出金勘定)
有価証券利息配当金
国債等売却益
株式等売却
役務取引等
その他
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1,254
(32,481)
41 4 55 133 76 |
918 (77,750)
221 31 299 336 |
33 (601) 94 43
175
9 |
※2016/3期
一方、高知信用金庫は、貸出利息はその経常収益の10%にも満たないが、有価証券配当金や、国債・株式売却益が経常収益の90%近いのである。30年以上金融機関に勤めていたが、寡聞にして、このような金融機関があるとは全く知らなかった。昔気質の元金融マンとしては、結構「怖い」気がするが、独自の特色といえば、他と差別化を図った金融機関と言える。
・ このように見てくると、新たなビジネスモデルを構築している数少ない銀行が、スルガ銀行と言えるのではないだろうか!
7、今後のスルガ銀行は?
(1)第三者委員会の調査報告書については、前回、その内容も含め批判を述べたが、ただ、銀行の内部統制については、すべて「正しい」とは思わないが、相当程度、「ガタついている」ことは間違いないようだ。
(2)創業者一族の独裁と一族企業への不透明融資、コンプライアンスの欠如、人事評価制度の歪さと人事昇格等のラインの逸脱、経営陣の一角としての役員、あるいは社外役員の見て見ぬふりをする企業風土等、是正すべき事柄は多い。これを「普通」に戻すには結構な力仕事になり、このリーダーは銀行内から昇格した社長では無理である。
かといって、銀行外からなら誰を持ってきてもいい、というわけではない。銀行の本質を知り、かつスルガ銀行の特色を「良し」と考える人材でなければならない。弁護士、公認会計士は実務を知らないからダメ、経営コンサルタントと称する者は、評論家になりきり責任が持たないからダメ、じゃー、現在の他の金融機関の役員連中はどうか、というと、器の小さい小粒の連中が多いので最良の策ではない。
難しい!!!!
(3)兎に角、ベストな人材を見つけ、この特色を生かして、金融庁をはじめ、メディアの評論家をみ返して欲しいものである。