#失恋

熟年の生きる価値第9回

第3節 最後の夜 もう外は午後10時をとっくに廻っていた。 「鈴木君、ちょっと遅いが、例の店に行こう。資金は社長もちだから心配なし」 と鈴木君を誘った秋月だが、念のため 「社長が明日帰国するように言っているが 明日いきなり飛行場へ行って、成田へ…

熟年の生きる価値第8回

第3節 交渉決着 「ロバート弁護士、何とかオーナーの居所は分かりませんかね。どうしても直接オーナーに話してみるしか方法はないと思いますので」 「そうですか、その方法しかないですか。 ただ、先方の弁護士がこのことを知れば『へそを曲げる』可能性が…

熟年の生きる価値第7回

第2節 経緯 そもそもこのプロジェクトは、あの美しい中村女史の6カ月前の発案が発端であった。 「この分野は全く日本にない美容分野で、反響は大きく絶対に受け入れられると思い ます。アメリカではこの美容分野は、特殊なものではなく常識になっているく…

熟年の生きる価値第6回

第3節 事前打ち合わせ 「いや、この契約書原案には大きな2つの問題があります。一つはアジアにおける相手方の拡販に対して、あなたの会社の承認が必要ということです。それからもう一つは、先方が本契約書を解約する権利をあなたの会社が制限していること…

熟年の生きる価値第5回

第三章 交渉前夜 第一節 ロサンゼルス空港 「やっと着いたね。早速だが、タバコが吸えるところに案内してくれる!」 ニコチン中毒者のように、秋月が最初にアメリカで発した言葉だった。 「室長、アメリカでは屋内には絶対ありません。普通であれば、空港ロ…

熟年の生きる価値第4回

第二章 銀行から化粧品業界へ 第一節 化粧品業界への扉 「このブランド導入の話は、間をおかなく詰めたほうがいいよね。どう思う、秋月さん」 「それは絶対ですよ。すぐに最終の詰めに行ったほうが先方も気を良くします。なにしろ先方は基本的には個人企業に…

熟年の生きる価値第3回

第二章 第二の人生の旅立ち 第一節 運命の扉 「支店長、人事部長からお電話です」 と副支店長からの電話。 「分かった。代わってくれ」 と答えたものの、 『この時期に何かな。部下行員の人事異動も終わったばかりだし、自分もこの店の在任は まだ一年半、異…

熟年の生きる価値第2回

第一章 京都の夜 秋月の二日酔いの原因は、前夜、お客様の接待を受け、京都・宮川町のお茶屋で遊んだ ことにある。 (宮川町は、祇園、先斗町と並ぶ花街で、祇園の「都おどり」に対して「京おどり」と して有名) 特に、そのお茶屋で、それも話を聞くだけで…

j熟年の生きる価値第1回

熟年の生きる価値(第1部) ―団塊の世代が歩んだ定年後の 「生き甲斐」を求めて― 作 秋月 蕾心 プロローグ 午前8時55分。朝礼による支店長訓辞を終えてから、その男は支店長室に直行した。 入室するや否や、すぐに、模造紙を机一杯に拡げてみせた。 模造…